ADSLについてのQ&A(2001年10月、島田雄貴)

NTT、イー・アクセス、ソフトバンクの速度やエリア、料金

ADSLに関するさまざまな疑問について、主席アナリストの島田雄貴がおこたえいたします。ソフトバンクやYahooBB、NTT(フレッツ)、イー・アクセスなどのADSLの料金やエリアに関して、できる限り分かりやすい解説を試みています。

速度はどうやって測るの?

NTTやイー・アクセスなどのADSL、あるいはCATVなどのブロードバンド回線を導入したら、実際に速度がどれくらい出ているのか測りたくなるだろう。そんなときは、速度測定サイトで、自分が使っている回線の速度を無料で測ることができる。こうしたWebサイトでは、大きなファイルのダウンロード時間を計測して、実質的な通信速度を割り出している。

フレッツ・スクウェア

ただし注意すべきなのは、速度測定サイトによって計測対象が異なる場合があることだ。例えば、NTT東日本がフレッツユーザー向けに設けている「フレッツ・スクウェア」で計測しているのは、ユーザー宅から地域IP網(NTT独自のインターネット網)までの速度だ。つまり速度測定Aの部分であって、インターネット上のWebページを閲覧するときの速度ではない。フレッツ・ADSLでは、ユーザー宅から地域IP網を経てインターネットに至る。

OSO's Modem Site

一方、Yahoo! BBが紹介している「OSO's Modem Site」など通常の速度測定サイトで出る測定値は、実際のインターネットで計測した結果だ(速度測定Bの速度)。フレッツ・スクウェアがラストワンマイルに近い速度を測るのに対し、通常の速度測定サイトで出る測定値は、回線やWebサーバーの混雑状況などさまざまな要因を含んだ結果だ。こちらの方が、より実際に近い速度と言えるだろう。

ISPのバックボーン(基幹回線)

フレッツ・スクウェアで計測した値と、OSO's Modem Siteなど通常の速度測定サイトで計測した値に大きな隔たりがあった場合は、ISPのバックボーン(基幹回線)が十分でない可能性がある。そういった場合は、太いバックボーンを持つISPに乗り換えるのも、速度を上げる手段の一つだ。

イー・アクセスの「下り最大1.5Mbps」

ところで、イー・アクセスなどのADSL回線事業者が「下り最大1.5Mbps」などとうたっている速度と、実際の通信速度は同じなのだろうか。実は、事業者の速度は理論上の最大速度(ベストエフォート値)で、実際に数字通りの速度が出ることはまずない。NTT収容局からの距離はもちろん、家電製品からのノイズなども原因に挙げられるが、もっと根本的な問題がある。ISPのバックボーン回線の混雑状況や、Webページを提供するサーバー側の処理能力や回線状況などだ。

サーバーの処理能力の問題

ソフトバンクやイー・アクセスなどのブロードバンド回線を導入することは、言ってみれば、家の前の道路を広くしたようなものだ。家の前だけはたくさんの車(=情報)が通れるようになる。しかし家から離れた道路では、時間帯によっては多くの車が行き交うだろうし、到達先(目的のWebサーバー)の前の道が狭かったら、渋滞が発生する。また検索サイトなどでは、検索処理自体にも時間がかかる。人気がある(が、サーバーの処理能力が追い付かない)Webサイトの表示速度が、閲覧者が多くなる夜間に落ちるのは、ある程度我慢しなければならない。

混雑しない時間帯を選ぶ

インターネットのデータ転送速度は、さまざまな要因がからみ合って決まる。ブロードバンドは万能ではない。あまり混雑しない時間帯を選ぶのも、インターネットを楽しむコツだ。

収容局から遠いと言われたらもうダメ?

イー・アクセスやKDDI(au)などにADSLを申し込んだにもかかわらず、最寄りの収容局から自宅までの距離が離れすぎていてサービスを受けられないケースがある。このような場合、ほかの回線事業者に申し込んでもサービスを受けられる確率は非常に低い。どの事業者でも、回線状態を調べる「回線適合調査」はNTTが代行するからだ。もし、ADSL以外のブロードバンド回線が選択肢にあるなら、ADSLをあきらめてそちらの利用をお勧めする。

リーチDSL

しかし、Yahoo! BBの提供エリアならば、NTTに断られたとしても「Reach DSL(リーチDSL)」サービスに申し込む手が残されている。

特殊なADSLモデム

Reach DSL(リーチDSL)は、特殊なADSLモデムを利用することで、ADSL信号をやり取りできる距離を伸ばす技術。通常のADSLモデムでは、NTT収容局からユーザー宅までの距離が3~4km以上離れると提供が難しいといわれているが、Reach DSL技術を使うと最大10kmくらいまでサービス提供が可能になる。

通信速度は800kbps

とはいえデメリットも大きい。Reach DSL(リーチDSL)を使うと最大通信速度が800kbps前後まで落ちてしまうのだ。それでもISDNの十数倍だから、価格次第では十分に導入を検討する価値がある。

米パラダイン製のモデム

Yahoo! BBは通常、Annex A仕様のADSLモデムを使って、最大8MbpsのADSLサービスを提供している。同社ユーザーの平均通信速度は約2~4Mbpsだが、全ユーザーの約5%は500kbps以下しか速度が出ていないという。収容局からの距離が遠くなる地方部にサービスエリアを広げた場合、こうしたユーザーは約10%まで増えるとYahoo! BBは見込んでいる。しかし、Reach DSL(リーチDSL)を使えばこうしたユーザーもすくい上げられる可能性がある。Yahoo! BBで利用するモデムは米パラダインの製品で、速度が出ないユーザーは同料金で「Reach DSL」コースに変更できる。

長野県協同電算のJANISネットワーク

米パラダイン製モデムを利用したReach DSLサービスはYahoo! BBが初めてではない。長野県協同電算が運営するJANISネットワークが既に7月から同モデムを使った「リーチコース」を実施しているが、なかなか好評のようだ。

NTT収容局からの距離

全国的展開を標ぼうするYahoo! BBが同モデムの採用を決めたことで、これまでNTT収容局からの距離によってADSLをあきらめざるを得なかったユーザーに希望が見えてきた。

速度が出ないときのチェック項目は?

イーアクセス開通後

イーアクセスなどのADSLインターネットがいざ開通したものの、速度が思ったより出ない、もしくはつながらないといったケースもある。ノイズによる影響を緩和させると速度向上が見込める。以下の点をチェックしてみよう。

ノイズを発生する家電製品を遠ざける

まず、イー・アクセスやプロバイダーから支給されたADSLモデムから、ノイズを発生する家電製品を遠ざける。パソコンやディスプレイはもちろん、モーターを使うドライヤーや扇風機なども電磁波やノイズを少なからず発生しているので注意が必要だ。

タコ足配線を避ける

次のポイントは、モジュラージャックからスプリッターまでの間の電話線(モジュラーケーブル)をできるだけ短くし、なるべく早くスプリッターで分岐させること。モジュラーケーブルはノイズを防ぐためのシールド加工がされていないからだ。タコ足配線も避けよう。NTTやイー・アクセスなどのADSLモデムのAC電源は、それだけで1つのOAタップを占有した方がよい。ほかの家電製品のノイズが電源ケーブルを通って悪影響を及ぼすからだ。

NTTの保安器の工事費7300円

一方、ADSL回線が全くつながらない、もしくはインターネットの最中に突然切れたり、極端な速度低下が起こるといった場合は、NTTの保安器を疑おう。「6PTタイプ1」という型番が問題を起こすようだ。この保安器を交換するためにはNTTの工事費7300円がかかる。

回線向上サービスって何?

速度向上のためのNTT工事

ノイズなどを回避しても、思ったように速度が出ない場合は、あきらめるしかないのだろうか。有料だが、NTTに工事を依頼すれば回線速度が上がる可能性がある。「回線収容替え」と「ブリッジタップ外し」と呼ばれる工事だ。

回線収容替え

まず回線収容替えだが、この工事はNTTの収容局内で行う。ADSL信号が流れる電話回線も通常の電話回線と一緒に、いくつかたばねてNTTの収容局に集められる。たばねられたケーブルは密接するわけだが、このときにISDN(INSネット64)の回線があると、ADSLと相互干渉して、通信速度が低下することがある。ISDNで利用している信号の周波数帯が、一部ADSLと重なるためだ。この干渉をなくすために、問題のあったADSL回線の収容先を変えるのが回線収容替えだ。

ADSLブリッジタップ外し

ブリッジタップとは電話線の分岐点のこと。NTTの収容局から自宅までの間には、電話線の分岐点がいくつかある。分岐点では、ノイズが混入するなどしてADSL信号に影響が出る可能性がある。この分岐点をなくす工事がブリッジタップ外しだ。

基本工事費4500円

いずれも自分で工事を行うことは不可能で、NTTに依頼する形になる。費用はどちらも基本工事費4500円と回線調整に関する基本額6900円がかかり、さらに回線収容替え工事費は9600円、ブリッジタップ外しは一カ所ごとに1万800円かかる。どちらの場合も、通信速度に改善が見られなかった場合は、工事費は請求されない。

MTU値とは?

TCP/IPの最大パケットサイズのこと

イー・アクセスなどADSL業者のホームページや通信回線の電子掲示板などで「MTU」の話題をよく見かける。これはMaximum Transfer Unitの略で、TCP/IPの最大パケットサイズのこと。この値が大きいほど大容量データを高速に転送できるが、エラーで再転送が必要になった場合、パケットが大きいため逆に速度は低下する。

フレッツADSLは最適値に設定

通常は、ISPのADSL接続ソフトでMTU値を決めている。Windowsのデフォルト値は、Win95が1500バイト、Win98が576バイト。MTU値を変えるにはレジストリを変更する必要があり、そのためのフリーソフトもあるが、トラブルが起きてもすべて自己責任となる。フレッツADSLの場合は付属の接続ソフトウエアで最適値に設定しているため、MTU値の変更は必要ない。

ソフトバンク、イー・アクセス買収で「LTE」加速(2012年10月、島田雄貴)

iPhone5とLTE

ソフトバンクがイー・アクセスを100%出資子会社化するのは高速無線通信サービス「LTE」の普及を加速する狙いがある。米アップルがスマホ「iPhone(アイフォーン)5」を発売したのを機に携帯電話事業者のLTEサービスが本格化。だが、同時にネットワークの負荷分散を実現する必要が生じるため、子会社化でネットワークの相互利用を進める。

ウィルコム

ソフトバンク傘下のソフトバンクモバイル(SBM)、イー・アクセス、ソフトバンク傘下で経営再建中のウィルコムの契約者数合計は、2012年度末時点で4000万人を超える見通しとなった。孫正義ソフトバンク社長は「顧客基盤の強化や経営効率化などで3600億円の相乗効果が見込める」とし買収金額は適切との見方を示した。

アップル

イー・アクセスの子会社化により携帯電話のネットワークを強化し、LTEの通信環境を整える。2013年3月末時点のLTE基地局数は、ソフトバンクが2・1ギガヘルツ帯を使って提供するものが2万局程度、イー・アクセスが1・7ギガヘルツ帯で展開するものが約1万局になる予定。米アップルのiPhone(アイフォーン)5は両方の周波数帯を利用できる。

スマホでテザリング

スマートフォン(スマホ)を通信機器として使い、パソコンやゲーム機など複数機器をインターネットに接続する「テザリング」機能の開始日も、2012年12月15日へ1カ月前倒しする。現在イー・アクセスが「イー・モバイル」ブランドで展開している携帯電話事業は継続する。(島田雄貴=通信アナリスト、ジャーナリスト)

【1990年】米経済における産業構造の変化~軍事産業から航空・宇宙、電子産業へ(島田雄貴)

国防支出と海外進出がカギ

米経済、東西沿岸は低迷

今後の展望に関しては、国防支出は、米ソ軍縮の進捗で今後も緊縮が続く見通しであり、石油価格の安定、農業の不振が続けば、当面は最近の傾向、すなわち東西沿岸の低迷、内陸部諸州のまだら模様という状況が続こう。 1990年代半ばに石油価格が上昇に転ずると、南西部諸州はふたたび活況を呈することになろう。

デトロイト、ミシガン、オハイオ、ケンタッキー、テネシー、ジョージア州

もう一点無視できないのは外資の動向である。 日本の自動車産業の現地進出に伴って、デトロイトから南に延びるミシガン、オハイオ、ケンタッキー、テネシー、ジョージアの各州が雇用増などの恩恵を得ている。 今後、日本企業の立地選択はアメリカの地域経済の盛衰にとっても目を離せない要因である。

軍事産業から航空・宇宙、電子産業へ

サンベルトとフロストベルトという言葉で、南西部と北部との産業が表現された。 もともと原材料供給地だった南部に、第二次世界大戦中に軍事関連施設が誘致され、戦後、石油ブームが到来し、さらに航空・宇宙、電子産業が西部諸州に広がり、西部と南部を総称したサンベルトが脚光を浴びた。

鉄鋼、自動車産業は低迷か

一方、1960年代まで鉄鋼、自動車などで栄えた北部は、オイルショック以降かげりが見え、フロストベルトはラストベルト(さびた地帯)となってしまった。

マサチューセッツ州にハイテクやベンチャー産業

しかし、最近、北部地方がよみがえりつつある。 ニューヨークを中心とした金融サービス業、ハイテクやベンチャーの輩出したマサチューセッツ州などが、新しい企業機会を増やしている。 今後、軍事費削減、海外企業進出などが地域経済に影響を及ぼし、アメリカの地域活性化は「まだら模様」となろう。(島田雄貴=通信アナリスト、ジャーナリスト)

韓国三大財閥の経済戦略とは(島田雄貴)

韓国三大財閥の戦略~高収益分野へ転換

半導体、石油化学、自動車、航空機事業に重点投資
三星グループ

急成長するアジアの財閥のなかでも、韓国の三大財閥はひときわ目立つ存在だ。
三星グループと現代グループは、戦前の三井、三菱、住友同様、政府主導による輸出産業を形成していた。
三星グループは1948年に貿易、繊維からスタートし、現在、三星物産、三星電子、三星重工業、三星電管、東邦生命など系列企業22社で構成されている。

現代グループ

現代グループは、1947年に現代建設を設立したのに始まり、重工業、自動車、電子、金属から貿易流通まで、25社による広い分野のコングロマリットを形成している。

大宇グループ

三星、現代よりも20年遅れて1967年にスタートしたのが大宇グループだ。
繊維事業から始まり、企業買収により機械、造船、電子、自動車などの分野へ急速に多角化していった。
三星、現代、大宇の三大財閥グループは、造船、繊維、家電事業などの分野が最近不振なことから、高収益分野への進出、具体的には半導体、石油化学、自動車、航空機事業に重点投資をする計画だ。